今回の定例会では、男女平等や性に関する陳情が2点提出されました。それぞれの党派に様々な意見があり、会派内で賛否が分かれたため、私自身の陳情に賛成した理由を明らかにしておきます。
子どもを性犯罪、性暴力の加害者、被害者、傍観者にさせないために市内教育機関において「生命の安全教育」及び発達の段階や子どもの実態に応じた包括的性教育を充実させることに関する陳情に賛成しました。
もともと私は社会的な課題が増えるたび、いわゆる〇〇教育が学校教育課程に反映されることは、教職員の多忙化につながるため慎重な意見でした。ただ教職員の働き方改革の一環で、外部講師の導入がすすむなど事情が変わってきました。
性教育をめぐっては、かねてから根強い「寝た子を起こす」論に加え、2005年に自民党が「過激な性教育・ジェンダーフリー教育実態調査プロジェクトチーム」をつくり、国会や自治体議会で取り上げるなど、いわゆる性教育バッシングがあり、現場での実践を萎縮させました。
昨今の子どもの性被害を受けて、2023年に国は「性犯罪・性暴力対策の更なる強化の方針」で、2023~2025年の3年間を「更なる集中強化期間」と設定し、刑法改正などとともに「発達段階に応じ、就学前の教育・保育を含め、学校等において、引き続き、『生命(いのち)の安全教育』の取組を推進する」ことになりました。
「生命(いのち)の安全教育」は性教育の要素を含みますがその一部分です。ユネスコなどの国連機関が発表した「国際セクシュアリティ教育ガイダンス」(2009年初版・2018年改定)の8つのキーコンセプトのうち「4.暴力と安全確保」には対応していますが「7.セクシュアリティと性的行動」などは含まれていません。
反対討論では、第一義的に親の責任であること、学習指導要領の範囲を超えること、議会が学校の教育内容について議決することを懸念する意見がありました。
子どもの権利条約18条にもとづく親の第一義的養育責任は尊重されますが、それと学校での性教育は十分両立します。とくに保護者自身が十分に学んでいない性教育を子どもに教えることは現実的に難しく、同じ事情をもつ教職員も少なくありません。教職員の負担を軽減する意味でも、まだ性の情報について産婦人科医師などの専門家を外部講師に迎えた取り組みが求められます。
学習指導要領はあくまでも教育課程の基準を大綱化したものです。養護学校での性教育について争われた七生養護学校訴訟で確定した東京高裁判決は、学習指導要領について「一言一句が拘束力すなわち法規としての効力を有するとすることは困難」として「教育を実践する者の広い裁量」を強調しました。教育委員会の権限についても「教員の創意工夫の余地を奪うような細目にまでわたる指示命令等を行うことまでは許されない」と述べています。
議会による議決と学校現場との関係では、2021年6月の第2回定例会で「市内の市立小・中学校における男女混合名簿の採用に関する陳情」について、「各学校の出席簿作成は学校長の権限ではあるが、陳情の趣旨は了とするので、実現に向け努力されたい。」との意見付で全会一致で採択した例があります。あくまでも学校長の権限であるとの前提に立って、教育内容に意見することはありうると思います。
なによりインターネットの普及で子どもの性情報へのアクセスは容易になり、10代の予期せぬ妊娠も少なくありません。そうした現実から議論する必要があると考えます。
この陳情は3月12日(火)の本会議で賛成少数で不採択となりました。